【エルフェンリートパロ】
※r-15ほどじゃありませんが、猟奇・流血描写あり
それは軍事施設に近い鉄壁に覆われた建物だった。
武装した人間がチームに別れて各々施設を駆け巡っている。
その途中には、不自然な方向に首をねじ切られた死体が無数に転がっていた。
『アルファよりベータに報告、標的は施設の防壁を破壊して外部へ脱出しました。施設内の人員は警備にあたってください。
引き続きYURIの捜索を開始します。生死不問です。繰りがエまッ……』
無線の音声の語尾が醜く引き攣った。
同時刻、無線を放り出した物言わぬ肉塊が地に倒れる前に高く吊り上げられる。
彼の足元には月明かりに照らされた白い肌を晒す青年。
だが、彼の両手はだらりと下がっており、頭上から鮮血を滴らせる死体など見もしない。
死体は見えざる手によって装備を暴かれ、情報端末を奪われる。
落ちてきた端末を確認し、青年の身が射出されたように高く跳躍した。
人ならざる速度で闇夜の森を駆け、いつしか夜が明ける。
人里が見えてきた。何処の街かは知れないが。
ふぅっと息をつくと白い煙が昇る。ここは、寒い。こんな素裸では余計に。
一歩、二歩と裸足に食い込むアスファルトを踏みしめ、視界が揺らぐ。
施設を脱出する際、頭部に損傷を受けた。そのまま激しい運動を繰り返した為、今になって影響が出ているらしい。
三歩目は進んだが、四歩目は駄目だった。
薄れゆく意識の中でちいさく「ヴィクトル」と呟く。
べつに、「彼ら」が恐れるように人類を滅ぼすべく脱走したわけではない。
ただ、もう一度見たかった。
輝く銀色の氷の上、光を浴びて踊る彼の姿を。
***
ピーテルもすっかり暖かくなったものだ。
シーズンを終え、久々に暇を無理やり作ったヴィクトルは、早朝から愛犬と共に灰色に汚れた街を歩いていた。
「すっかり春だねえ、マッカチン。そういえば日本の春って綺麗なんだよ。今頃の時期はあちこちに薄いピンク色の花びらを散って、まるで花の絨毯みたいに幻想的なんだ。ピーテルもそうだったらいいのに」
ここに良識的なコーチか口の悪い弟弟子かいれば「無茶言うな桜死ぬわ」と呆れたろうが、あいにくマッカチンは犬なので「わふん」としか返事は出来ない。
何年かぶりにお気に入りのパン屋で朝食を買い込み、自宅に戻ることにした。
たまには愛犬とともに、のんびり過ごしたい。
まだ暖かな紙袋を抱えてほくほくしていると、マッカチンが首を横に向けて吠えた。
何台もの車が路上に駐められたその奥。
アパートとアパートの間にひっそりと残された汚れた芝生の上、誰かが倒れている。それも、裸だ。
驚いて駆け寄ってみると、東洋人の子供と分かる。あちこちが汚れ、軽症を負っているようだ。
黒く艶やかな髪から、なぜか三角形の、猫の耳のような角が生えており、裸体であるにも関わらず洒落っ気でつけているとは思えない首輪を付けていた。
タグには『001-YURI』と刻まれている。奇しくも弟弟子と同じ名だ。これがこの子の名前であれば、だが。
どう見てもワケあり。下手をするとロシアンマフィア関係。
角の生えた人間というのは、稀に存在する。詳しくはないが皮膚が硬化した瘤のようなものらしい。
いかにも東洋人らしく幼い顔で可愛らしい。肌は瑞々しく健康的だ。
珍しいという理由だけで囲われていたのでは、と眉を寄せた。
警察はアテにならない。
このまま放っておくわけにもいかない。
ヴィクトルはコートを脱いで彼をくるみ、彼のお腹にパンの袋をのせて、足早にその場を去った。
***
まず家に帰ってからマッカチンの足を拭き、それからソファに寝かせた青年に向き合って、さてどうしようと。
(傷……は見たところかすり傷ばかりだけど、頭を強く打っているなら病院には連れていかなきゃ)
とにかく体を拭いて手当をしなければ。
洗面器にお湯を張る。マッカチンの鳴き声が聞こえた。
「マッカチン、そのこ寝てるから静かに―――」
リビングに戻ると、青年が身を起こしていた。床にぺたんとお尻をつけて座り、楽しそうにマッカチンと戯れている。
他人をこの家に入れることは滅多にない。
ここはマッカチンとヴィクトルだけの静かな部屋。
それに固執していたわけではないが、見知らぬ存在がいてこれほど馴染むとは思わなかった。微笑ましい光景に思わず目が和む。
「気がついたならよかった。痛いところは?」
「ぷぎう!」
「…………………………」
ぷぎう?
子豚ちゃんのように鳴いて返事した青年は、洗面器をテーブルに置いたヴィクトルの懐に飛び込んできた。
「ぷぎうぅ!」
「わーお………頭を打ったせいじゃないよね?」
「ぷぎゅー!!!」
無邪気に擦りつく様はまるでマッカチンだ。
「とりあえず、汚れてるから体を拭こうね」
湯に浸したタオルを渡す。だが、黒髪の青年は首を傾げ、あむ、とタオルを食んだ。
あっ、これは……知能指数が……………
悟ったヴィクトルが角の生えた頭をよしよし撫でると、気持ちよさそうにチョコレート色の目を細める。
(くっ………)
ぷぎぷぎ喜ぶ謎の生き物に撃沈。
体を拭っている間もじゃれてくるし抱きついてくるしで大変だった。
とりあえずヴィクトルのシャツを着せ、パンを与えると両手で持ってはむはむ食べる。
お腹がいっぱいになるとマッカチンと一緒にラグの上で丸くなって眠ってしまった。
その様子を見ながら、ふーむ、と考え込む。
(行方不明者を探す情報はまめにチェックしよう。どうも危なっかしい)
尻や太ももを晒し無防備に眠るあどけない顔。それなりに育った男の子だというのに犯罪臭しかしない。
ひとまず寝室に運び、マッカチンを挟んで昼寝した。
***
意識がブレる。
痛む頭を抑えながら勇利は身を起こした。
(どこ、ここ……)
温かいベッドの上。こんな場所で眠るのは何年ぶりだろう。
窓から見える空が赤らんでいる。
手元にもじゃっとした感触があり、そちらに視線を向けて仰天した。
犬、と銀髪の男。
(ヴィクトル・ニキフォロフ!? なんでここに!!?)
確かに彼を―――というより幼い日に憧れた彼のスケートする姿をひと目見たい一心で脱走した。
あれから十年は経っているから、当時少年だったヴィクトルも二十代後半になっている。髪は短くなり、大人になったが、それでも見間違えはしない。
赤い顔で震える息をつき、シャツの胸元を握りしめる。
氷上を舞う姿も美しかったが、眠る横顔も絵画のようで……夢のようで。
(い……いや、見とれてる場合じゃない)
痛む頭に触れながら立ち上がり、窓を開ける。周辺に人影はない。住宅街のようだ。
勇利は窓枠に足をかける。
一度だけヴィクトルを振り返り、たまらない感情を抱いた。
(助けて……くれたのかな)
人に助けられるなど初めての経験だ。勇利は人類の敵として生を受け、人にない角を持つために迫害を受けてきた。
だが、だからこそ、これ以上ここにはいられない。
振り切るように勢いをつけて飛び降り、見えざる手を伸ばす。ふわりと地に降り立ち、出来るだけ人気のない道を選んで駆け抜けてゆく。
「――――っ」
ずき、と頭が痛んだ。先程から、頭痛がやまない。
(意識が……)
視界が霞み、ぐらつく。
こんなところで立ち止まるわけにはいかないのに。
***
標的が道端でへたり込んだ。
一般人があれを回収した時は対応に悩んだが、自分から出てきてくれるとは助かった。
なにしろ、一般人は一般人でもロシアの英雄ヴィクトル・ニキフォロフだったのだ。始末すれば国内に至らず世界中が騒ぎ出す。
男は慎重にボウガンを構えながら接近し、10メートル地点で足を止めた。
「大人しく投降しろ、始祖体」
警告を発すると標的はゆっくりと首を回して振り向き―――不思議そうに首を傾げて目を瞬かせた。そして、銃で威嚇されているにも関わらず、ふらと立ち上がろうとする。
男はその足を狙ってトリガーを引いた。放たれた矢は残念ながら掠っただけに終わったが。
「ぷぎっ」
標的が奇妙な声を上げて倒れ込む。
反撃してこないことを疑問に思うが、男は舌なめずりをした。
「取引をしないか、始祖体。お前の持つベクターウイルスで見えざる手を持つ兵器を増やせば敵なんぞいなくなる。お前も人間に追い回されることもなくなるだろう?」
「………」
その呼びかけにも応じず、始祖体は無様に足を引きずりながら逃走と試みる。男は眉を顰めた。なぜ、種族の強みである見えざる手を使わない?
これは好機かもしれない。何らかのトラブルが起きて見えざる手を使用できない状態にあるのではないか。
男を油断させる必要など、あの怪物にはない。もともと交渉のために姿を見せた。でなければ遮蔽物から絶対に出るものか。
男が接近しても、やはり始祖体は攻撃する素振りがなかった。
黒髪を掴み顔を上げさせる。
その顔を見て思わず噴き出した。
人類の敵、その始祖体ともあろうものが、情けなく痛みに喘いで泣いていたのだ。
「安心しろ。大人しく従えばかわいがってやる。ただし、体に爆弾を仕掛けさせてもらうがな」
そのくらいの保険は必要になる。だが、このザマでは拍子抜けもいいところだ。
ふらつく始祖体を引きずり、路端に停めた車へ向かう。
その扉を開けようとした、その時――――
男は顔面から窓に突っ込んだ。支えを失ったのだ。膝から下という支柱を。
窓ガラスに映った始祖体の目と合った。
「ねえ、たのしい……?」
いっそ妖艶なほどに薄ら寒い笑みを浮かべる暗い瞳。
己の不注意を嘆く前に、男の首は落ちた。
***
(一瞬、意識が飛んだけど。なんだったんだろ)
人の髪を掴んで引きずっていた男を殺害してから、ユウリはその場を離れる。
早くこの街をでなければ。ヴィクトルに迷惑がかかってしまう。
そうだ、彼の住まいの傍で死体なんか作るべきではなかった。きっと怖がらせてしまう。
(ヴィクトルにだけは、こんな姿……見られたくない)
人を殺す抵抗など消え失せてしまったが、それでも勇利に優しくしてくれた数少ない人々からもらった愛を忘れた訳ではない。
その優しい人々も、みな人間の手によって殺された。
勇利は人類の敵として生まれ、同類を増やす始祖体であるそうだが、そんなことはどうでもいい。
ただ大切なものを守りたかった。それなのに、どうしてこんなことに?
「――――ゆーりっ!」
己の声を呼ぶ声にぶるっと身を震わせる。
本能的に自分に危害を加えるものではないと察した。それどころか、焦って不安の感じる声。
いつか聞いた少年の声が、大人になったものだった。
(探しに来てくれた……?)
信じられない思いで血にまみれた己の身を抱く。
また頭痛。何時の間にか足も怪我をしたらしく、うまく動かない。
とにかく、ヴィクトルから身を隠さねば……アパートの影に身を寄せる。
どうか此方に来ないで、と祈りながら目を閉じた。
***
昼寝から目を覚ますとユウリの姿はなく、ヴィクトルは慌てて部屋を飛び出た。あんな子がまともに一人で出歩けるとは思えない。ましてあの格好で。
一緒についてきたマッカチンが、いつになく険しい鳴き声を上げる。
鉄の匂いが立ち込めている。そろそろ日が沈む時間、薄暗い道の端に赤い液体が広がっていた。その中央には……ヴィクトルは目を背けた。
道の先にボウガンが転がっている。とてもあれで傷つけられたとは―――いや、人の仕業とも思えぬ酷い死体だった。
さすがのヴィクトルも衝撃を受けたが、余計にユウリを探さなければ。
案外すぐに見つかった。アパートの壁に凭れ蹲る人影を発見し、ほっと息をつく。
「ゆーり」
膝をついて様子を見る。シャツや頬に血がついていた。慌てて体を調べるが、怪我はないようだ。顔色は悪く、意識がない。
犯行現場の傍にいて、巻き込まれかけて逃げたのかもしれない。
とにかくあんなものに関わるのは御免だった。通報していらぬ注目は浴びたくない。ヴィクトルが猟奇殺人の参考人になったとなれば、無関係な通行人だったとしてもスキャンダルだ。
ゆうりを抱えて家に戻り、ずるずると扉に背をつけてずり落ちる。
「びっくりしたねえ、マッカチン」
「わふ」
「ゆうり、起きて」
膝の上に抱いたゆうりの肩を叩き、覚醒を促す。
少し苦しげに眉を寄せながらも目を開く様子に胸を撫で下ろす。
「怪我はない? 具合の悪いところは」
「ぷぎ?」
「行きたいところや帰りたいところがあるなら一緒に行くから、一人で出ちゃ駄目だよ」
「???」
ぽけ、と口を開けるゆーり。だが、叱られた意味などわかっていないのだろう。すぐに笑顔でヴィクトルにじゃれかかり、肩口にすりついてきた。
一瞬だけ見た凄惨な死体は頭から焼き付いて離れない。
それだけに無邪気なゆうりの姿を見ると昂ぶっていた神経が鎮まってゆく。ぷぎぷぎ鳴いて、かわいい子豚ちゃん。帰るおうちが見つかるまで、ちゃんと面倒見てあげるからね。
つづかない
想像以上に難しかった
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